娑羅屋 遊興指南

陰間(かげま)

 江戸時代に色を売っていた少年の総称。まだ舞台に上がる前の、修行中の歌舞伎少年役者を「陰の間」と呼んでいた事に発する。陰間を置いた茶屋は別名、若衆茶屋とも称した。

男形
 陰間の中で女装をせず、主に女相手の仕事をする者の総称。見世の者からは兄と呼ばれる。

女形
 女のように着飾って男相手の仕事をする者の総称。店の者からは姉と呼ばれる。陰間の中で特に美しい者、若い者がなり、歳のいった女形は男形に転身する。

昼三
 張見世をせずに新造、禿を連れ茶屋で客を待つ、つまり道中をする特権を持つ最上級の陰間、特に女形について言う。別名、呼出し。

金三分
 呼出しでない昼三。

座敷持
 平生起居する自分の部屋と別に、客を迎える座敷を持つ者。新造はつかない。

部屋持
 平生起居する自分の部屋に客を迎える。比較的年上で身売りされた者や、 新造の中でも素質の良くない者が座敷持や部屋持となる。

新造(しんぞ) 
 まだ客を取らない若い者。姉もしくは兄陰間につき、身辺の世話をしたり座敷に出て酌をする。

禿(かむろ)
 幼くして見世に売られた十一、二までの少年。新造と同様、姉もしくは兄陰間について身辺の雑用をする。姉、兄にすべての面倒を見てもらい、後に新造出しで新造となる。上玉は特に楼主の手元で芸事の心得を受け、ゆくゆくは呼出しとなった。特にこの禿を引込みと言う。

花魁
 部屋持以上の上位の女形を言う。

若い者
 見世の男衆。別名、喜助。見世番や二階一切の世話をする二階廻し、不寝番、掃除等の雑務を行う中郎など、その役割は多岐に渡る。

幇間(ほうかん)
 別名、男芸者、太鼓持。座敷に出て唄や踊りで興を催す。陰間の気をはかる細やかさや、茶屋や船宿にも融通の利く顔の広さを持つ。男であれ女であれ、芸者は色を売らない。

遣手(やりて)
 二階の事一切を取り締まる。常に目を光らせているため、陰間達には嫌われた。

引手茶屋
 大見世へ揚がる客を案内する。吉原で茶屋と言えば陰間茶屋ではなくこちらを指す。客はまずここで陰間を指名し、それを請けた見世が客を迎えに陰間を遣る。茶屋で酒宴を開いた後、客は陰間を伴って登楼し、再び宴となる。

一枚目
 見世の陰間、特に男形の中で一番の稼ぎの者を言う。次いで二枚目、三枚目と称した。

大見世
 見世の位により大見世、中見世、小見世とある。これは張見世をする座敷の籬(まがき)と呼ばれる格子の形により区別でき、それぞれ一面格子の惣籬、一部が空いている半籬、格子が腰までの惣半籬となる。

花魁道中
 呼出しの女形が仲の町を通って茶屋入りする事を言う。廓の灯が点る頃から始まり、花魁を筆頭に若い者、花魁付の新造、遣手等が列を成した。花魁の行う「八文字」は道中独特のもの。

大門
 「だいもん」でなく「おおもん」と呼ぶ。吉原に出入り出来る唯一の門。脇には門番所があり、女は手形を持たぬ限り通行出来なかった。手形は門外の茶屋で購入出来る。

細見
 吉原廓内の茶屋、遊女屋の名、位づけをした遊女、陰間の連名を刷った案内紙。細見売りが売って歩いた。

清掻(すががき)
 張見世の間に弾かれる三味線だけの囃子。

張見世
 昼夜二回行われる顔見せ。昼九つから夕七つ(正午から午後四時)までと、暮六つ(午後六時)から行われた。その頃までに陰間達は髪を結い、化粧を済ませている。内所の縁起棚の鈴と清掻の音を合 図に見世に下り、位の高い者が毛氈の中央へ、後は順に左右に座って行った。客はここで気に入った陰間を見つけ、見世へ揚がる。

紋日(もんぴ)
 年中行事と共にある祝い日。紋日には馴染みの客に一日中買い切られる事を常とする為、陰間達の悩みの種。客のつかない者もいたが肩身が狭い思いをするのを嫌い、自分で自分を揚げる身揚がりをした。当然借金も増える。